第2回の「血統こらむ」から、現代競馬の主な父系統として、ノーザンダンサー系とヘイルトゥリーズン系を紹介してきました。
今回、紹介する父系統は、
ミスタープロスペクター系
です。
では、詳しく見ていきましょう。
ミスタープロスペクター系
ミスタープロスペクター系は、競馬ファンの間で「ミスプロ系」と略して呼ばれることもありますね。
ミスタープロスペクターは、1970年にアメリカで生まれました。
これまでの「血統こらむ」で紹介してきた、ノーザンダンサー(1961年産)とヘイルトゥリーズン(1958年産)に比べると、若い父系統といえます。
また、ノーザンダンサーとヘイルトゥリーズンは、Nearco(ネアルコ)を共通の祖先としていますが、ミスタープロスペクターは、ネアルコの直系子孫ではありません。
ネアルコの祖父にあたる、Phalaris(ファラリス)が共通の祖先になります。
つまり、ミスタープロスペクターも父系をたどれば、ダーレーアラビアンに行きつきます。

ミスタープロスペクターの競走成績は、アメリカで走り14戦7勝。
重賞での勝利はなく、競争実績は平凡と言わざるを得ませんが、6ハロンのレースで2度レコード勝ちを記録しています。
種牡馬入り後は、ダートの短距離で好走する馬をコンスタントに輩出し、1979年の2歳リーディングサイアーとなります。
2歳リーディングサイアーになったとはいえ、ミスタープロスペクターの一般的な評価は「早熟ダート短距離向き」にとどまっていたことが想像できます。
しかし、1979年に生まれた1頭の産駒の活躍で、ミスタープロスペクターの運命は大きく変わります。
その馬の名は、
コンキスタドールシエロ
です。

コンキスタドールシエロは、1981年に2歳でデビューし重賞を勝利しますが、脚部不安の影響で、クラシック初戦のケンタッキーダービーに出走することはできませんでした。
しかし、古馬相手のメトロポリタンハンデキャップ(ダート1マイル、GⅠ)を7馬身差で圧勝し、連闘でクラシック最終戦ベルモントステークスへ挑みます。
マイル(約1600m)から12ハロン(約2400m)への距離延長、しかも連闘という、いささか常識から逸したローテーションでしたが、ここを14馬身差の逃げ切りで勝利します。
コンキスタドールシエロは、1982年のアメリカ年度代表馬と最優秀3歳牡馬を受賞し、父であるミスタープロスペクターの評価を一気に高めました。
その後、ミスタープロスペクターは、1987年と1988年のアメリカリーディングサイアーに輝き、1999年に没するまで長きにわたり種牡馬として活躍することになります。
■主な産駒
- ファピアノ:メトロポリタンハンデキャップ
- ミスワキ:サラマンドル賞(仏GⅠ)
- コンキスタドールシエロ:ベルモントS、1982年米国年度代表馬
- キングマンボ:仏2000ギニーなど
- フサイチペガサス:ケンタッキーダービー
- 他多数!
ミスタープロスペクターの子系統
ミスタープロスペクターを父に持つ種牡馬は、産駒が世界各国で活躍し、ミスタープロスペクターの名を世界に広めています。
■ミスタープロスペクターの主な子系統
- ファピアノ系
- ウッドマン系
- キングマンボ系
日本では、キングカメハメハ(父キングマンボ)がNHKマイルCと日本ダービーを制し、種牡馬としてもロードカナロアなどを輩出し成功しました。
■日本の主な種牡馬
- ロードカナロア
- ドゥラメンテ など
ヨーロッパでのミスタープロスペクター系
ミスタープロスペクターはアメリカ産で、産駒や後継種牡馬の多くも、アメリカで活躍しています。
そのため、「アメリカ血統」の代名詞のように認識されている方も多いかも知れません。
確かに、ヨーロッパで活躍するミスタープロスペクター系種牡馬は少なく、代表格はドバウィ(父ドバイミレニアム)といったところで、決して主流血統ではありません。

しかし、直系子孫が少ないミスワキは、凱旋門賞を制した名牝
アーバンシー
を輩出しました。
アーバンシーは、繫殖牝馬としてガリレオ(英ダービー他、2010年~英愛リーディングサイアー)やシーザスターズ(凱旋門賞他、種牡馬)を輩出しています。
2017年と2018年の凱旋門賞を連覇した、エネイブルの血統表でもミスタープロスペクターの名が確認できます。

ミスタープロスペクター系は、ヨーロッパでの直系子孫は少数派かも知れません。
ですが、アーバンシーを介して、多くの馬の血統表にその名が確認でき、大きな影響を与えていると言えます。
この点が、ミスタープロスペクター系を親系統として紹介した大きな理由です。
ミスタープロスペクター系の活躍馬
日本での、ミスタープロスペクター系で活躍した馬は、
キングカメハメハ
無しには語れません。

■戦績:8戦7勝
■主な勝鞍:日本ダービー、NHKマイルCなど
■種牡馬成績:2010年、2011年日本リーディングサイアー
■主な産駒:ローズキングダム(ジャパンカップなど)、アパパネ(牝馬三冠)、ドゥラメンテ(皐月賞、日本ダービー)、ロードカナロア(香港スプリント連覇など) 他多数
キングカメハメハは、NHKマイルCと日本ダービーをレースレコードで制した競走成績はもちろん、種牡馬としても成功し、日本にミスタープロスペクター系を定着させました。
惜しくも、2019年に天に召されましたが、代表産駒のロードカナロアがアーモンドアイを輩出するなど、後継種牡馬にも恵まれています。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます。
ミスタープロスペクターは、競走実績だけ見ると一介のスプリンターに過ぎなかったかもしれません。
しかし、生を受けてから50年経った今では、世界中の競走馬の血統表でその名が見られ、大きな影響をもたらしています。
ぜひとも、日本で生まれ、日本の競馬を走った身近な馬が、後にその血統を世界に広げることを望みたいものです。
では、今回はこのあたりで失礼いたします。
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